何年か前から日本でも一部の音楽ファンの中で「レコードが熱い!」「レコード女子」とか言われたりしてるけど、これはオシャレアイテムとしてレコードを扱っている向きが強く、音楽文化として復活したとは今のところ言いがたい。
普通の人が音楽を聴こうとした時、「レコードを買おう」という選択肢はほぼ無いだろうし、そもそも新作アルバムで、レコード盤が販売されることがまずない。
あり得ない、と思うだろうか。
欧米ではブームを超え、完全にレコードで音楽を聴くという文化が復活している。
今のレコード売り上げは1980年代後半、つまりリアルタイムでみんながレコードを買っていた時代と同水準に戻っているのだ。
もちろんCDやダウンロードの売り上げを遥かにしのいでいるし、ロックアルバムも、サイドA、サイドBを意識した構成が復活した。
これはちょっと予想しなかった事態だ。
日本ではまだCDが売れ続けているが、欧米(というか、日本以外ほぼ全ての国)にはタワーレコードやHMVのようなCD屋はもうほとんど無い。
日本でCDが売れ続けるのは音楽業界の保身的な体質のせいだと思うのだけど、それはまた別の話。
とにかく、音楽は間もなく完全にデジタルだけの物になる、とみんな思っていたのだ。
でもそこに物足りなさを感じたのは驚くべきことにアナログを知らない若者だった。
デジタルで大量の音楽に触れた若者は芸術としての音楽を知り、その本来の大きさのジャケットや歌詞カード、レコード盤を所有して味わいたいと思うようになったのだ。僕もこの気持ちはとても良く分かり、好きなアルバムのアナログ盤を中古で買うことが良くある。
使い捨てのような気分で聴くのと、スピーカーに向き合ってジャケットや歌詞カードを見ながら最初から最後まで聴くのではやっぱり違う。
この気持ちを最近の若者は分からないのだろうなあ、と思うのは間違いだ。
いずれ数年すれば、日本にもこの波は来る。
まだ多くの日本に若者はその感覚を味わったことがない、というだけの話だと思う。
何も知らない若者にはアイドル音楽を与えていれば大丈夫だろう、と思っている日本の音楽業界のオヤジ達は、すぐに思い知らされる。
若者の感性を舐めちゃいけないのだ。
特に今の音響でレコード盤を聴くと、今まで聴こえなかった音も聴こえるようになっていて、音楽の自然な生命力とか躍動感を感じられるようになっている。
アナログ盤を聴いたことがないという人も、昔聴いたけど20年くらい聴いてないという人も、騙されたと思って今の音響でもう一度聴いてみてほしい。
懐古主義では片付かなかった理由が分かるはずだ。