ジャズの素養を持っているドラマーに、バンドのリーダーは尋ねた。
「今、世界で一番うまいサックス奏者は誰かな?」
ドラマーは答えた。
「ソニー・ロリンズだろう。」
リーダーは決めた。
「よし、じゃあこの曲ではソニー・ロリンズにサックスを吹いてもらう。」
ドラマーは慌てて答えた。
「彼はジャズの王様だよ。俺たちなんかのレコードに、参加してくれる訳ないだろう。」
しかしリーダーはすぐに動き、ソニー・ロリンズはスタジオにやってきた。
リーダーは彼に気を遣い、
「録音中、スタジオに一緒にいても構わないでしょうか?」と聞いた。
ソニー・ロリンズは言った。
当たり前だろう。
どんな印象で吹いて欲しいか、お前は俺のそばで踊って、示してくれ。
リーダーのあのクネクネとした体の動きに合わせて、彼はサックスを吹いた。
1981年、MTVがスタートしたばかりの時に発売されたので、MTVは待ってましたと言わんばかりにこの曲のビデオを1日何回も流した。
女、ドラッグ、アルコールがテーマになっている曲が多い中で、「友達を待っているだけなんだ」と繰り返すこの優しい曲にファンは感動した。
「亡くなったジョン・レノンへのトリビュートなのではないか?」という解釈も話題となった。
グリーン・デイのビリー・ジョー・アームストロングは、
「この歌はこのグループの最高傑作だ。僕の葬式でかけて欲しい。」と語った。
「Waiting on a Friend」は確かに、ローリング・ストーンズの最高傑作の一つ。
娼婦はいらない
酒もいらない
ただ泣きついたりできるような人が欲しい
女と寝たり別れたりは若者の遊びだが
俺は女を待っているんじゃない
友達を待ってるだけなんだ
Waiting on A Friend/The Rolling Stones
1分30秒辺りで通過する背の高い金髪女性は当時のミック・ジャガーの奥さん、ジェリー・ホール。
ミック・ジャガーが横に座った白いTシャツの男性はレゲエ歌手ピーター・トッシュ。この6年後、強盗に襲われ射殺された。