1607年。
ヴァージニアの自然豊かな野山にイギリス人がやってきた。
銃を手にし、容赦なく攻撃を始めた。
先住民は激しく抵抗し、戦いは何日も続いた。
勝ったのは先住民。
「おい、この野蛮な白人どもを皆殺しにしてやろうぜ。」
血気盛んな先住民は口々にそう言った。
しかし酋長は言った。
「止めろ。言葉は通じないが、彼らも人間だ。我々と同じように家族もいる。彼らも幸せな暮らしをしたいと願っているはずだ。食糧を分け与えてやろう。」
こうしてイギリス人と先住民は少しづつ交流を始めた。
しかし食糧を得たイギリス人は計画を実行するタイミングを図っていた。
計画とは、この地を自分たちの物にすること。
その為に必要なのは、酋長の娘だった。
そしてある夜、ポカホンタスはイギリス人に手足を縛られ、村から連れ去られた。
イギリス人は言った。
「この酋長の娘に言葉を覚えさせよう。おい、いいか、これから英語を使え。俺たちと生活を共にし、俺たちの神を信じるんだ。」
ポカホンタスは答えた。
「私たちの部族が攻撃されないのならば、私は従います。」
こうして彼女は英語を覚え、キリスト教の教会で祈りを捧げる生活を送った。
数年が経ち、野山を駆け回っていたインディアンの少女は、貴族と同じ帽子をかぶり、コルセットを体に巻き、ドレスに身を包んでいた。
彼女はイギリス人の妻となり、子供を産まされていたのだ。
「ポカホンタス、これがロンドンだ。世界一の大都市だ。良くその目で見ておけ。」
ロンドンに連れて来られた彼女が目にしたのは、見たこともない光景。
人がひしめき、街は汚れ、川はゴミで溢れている。
「こんなの人間が住むところじゃない。」
彼女は手を引かれ、街中を歩いた。
彼女は見世物だったのだ。
「諸君、この女性を見たまえ。野蛮な原住民も我々と同じように、文明的になることが出来る。我々のアメリカ進出は、未開の地に文明をもたらす、正義の戦いだ。」
ポカホンタスは毎日泣いていた。
「祖国に、あの野山に帰りたい。」
願い虚しく、彼女は異郷の地で病に倒れ、21歳の若さでこの世を去った。
「ポカホンタスは、我々に心を開いたアメリカインディアンのプリンセス。文明化のヒロイン。」
そんな文字が新聞に踊り、彼女の死はその後、植民地を正当化する宣伝に利用されていったのだった。