ブラックメタルの明るい未来。Abbath(アバス)の存在
教会への放火、バンドメンバーの殺害、自殺したメンバーの遺体写真をアルバムジャケットに使用、精神病患者の叫び声を収録、拷問、同性愛者の殺害、ステージ上での動物切断…。
考えたくもないことだが、これらは90年代初頭、いくつかのバンド界隈で実際に起こったことだ。
多くのヘヴィメタルファンは触れたがらないが、この歴史から目を背けることはできない。
しかし時代は変わりつつある。
今のブラックメタルシーンは健全な物になっている。
その旗振り役となっているのが、Abbath(アバス)だ。
オルヴェ・エイケモ、別名アバスは、1991年からデスメタルバンドImmortalのメンバーとして活動。
しかしImmortalの解散にともない、2015年に自身のバンドAbbathを結成した。
悪魔崇拝の歌詞、死体を模したコープスペイントなど暗いイメージがどうしても付きまとうブラックメタルシーンにおいて、彼はほぼ初めてと言っていいであろう、ユーモアを持ち込んだ。
Abbathの登場で、これまでブラックメタルを避けていた人々もこのジャンルに触れるようになり、そこに新たな面白さを見出すようになった。
そんな彼らにAbbathは、「ブラックメタルだから観客はこうすべきだ」という考えを捨てるようにアドバイスをする。
ブラックメタル業界や、ブラックメタルのファンはどの様にあるべきだと思いますか?という質問に彼はこう答える。
そんなことは考えない。
ブラックメタルも、元を辿ればロックンロールに過ぎない。それは自由についてであり、こう振る舞え、こうすべきだ、と言ってくる奴らに対してクソ食らえ、ということであり、自分を信じることだ。自分だけの道を歩むことだ。好きな様に楽しめ、好きなように頭を振れ。
Abbathの自由さが、ノルウェーのブラックメタルシーンを大きく変えつつある。