海外メディアが報じる日本

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クラーク博士講談

札幌農学校の諸君、私はアメリカに戻ります。この学校で君たちとともに過ごしたこと、私はしっかりとそれを胸に刻み、前に進みます。君たちもどうかそうあってほしい。仲間を大切に。何かを成し遂げようと思う気持ちを忘れないこと。」
そう言うと、生徒一人一人と固い握手を交わした。生徒達は涙を流した。

「クラーク博士、本当にありがとうございます。どうかアメリカに戻ってもお元気で。必ずまた日本に戻ってきて下さい。」

クラークは馬にまたがり大きな声で言った。
「私は必ず日本に戻る。それまで元気でいなさい。少年たちよ、大志を抱き続けなさい。この老いぼれのようにね。」

日本での任務を終えたクラークはその実績を買われ、アメリカでも農業大学の学長を務めた。

そんな彼にある実業家が近づいてきた。
「クラーク博士。あなたは日本でたいそうな実績を挙げたそうじゃないですか。その素晴らしい手腕で、ぜひ夢のある仕事をやりませんか。船の上に大学を作るんです。そして若者と一緒に世界中を旅しながら共同生活をし、学問を修め…。どうです、魅力的でしょう。」

クラークは大喜びした。
「素晴らしい。やりましょう。学生とともに世界を一周しましょう。そしたら私も大好きな札幌に行って教え子に再会できます。」

しかし計画はうまく行かなかった。
出資を募っていた実業家は病気のために急死。
クラークが出資したお金も返っては来なかった。

失意に暮れているクラークのもとに、また新たな実業家が現れた。
「クラーク博士。色々とご苦労があったようですね。日本に行く資金なんて簡単に作れますよ。私と一緒に、銀を採掘する会社を作りましょう。今は銀の時代です。とにかく儲かるんですから。」

日本に行きたい。
その一心でクラークは採掘会社の社長になった。
最初はうまく行き、彼はあぶく銭を手にした。

これは行ける。
そう思ったのも束の間、採掘ブームはあっという間に終わってしまった。
仲間だと思っていた実業家は横領を繰り返し、行方をくらました。会社は倒産する。

多額の借金を抱えた彼は病に倒れた。

私はいったい何をやっていたんだろう。
また日本の仲間と、学び舎でともに時間を過ごしたい。
そう願っていただけなのに。