海外メディアが報じる日本

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グッドイヤー創業講談

工場には債権者が詰めかけていた。
「お前は嘘つきだ。出来もしない発明にどれだけ金を費やしたと思っているんだ。」

「待ってください。これはこの世の中を変えるくらいの大きな発明なんです。どうかもう少しだけ、猶予をください。」

「駄目だ。この工場は差し押さえる。これまでに融資した金も全て返してもらうからな。」

グッドイヤーは一文無しになった。
しかし彼は諦めなかった。

自宅を改造し実験室を作り、ゴムに薬品を混ぜる実験を重ねた。
天井は真っ黒。
家の中はいつも薬品の匂いで充満していた。
それでも彼の友人や子供たちは彼の実験の成功を信じた。

ある日玄関で怒鳴り声が聞こえた。
立っていたのは家の大家。
「おたく、いい加減出てってくれよ。近所から、この家は臭いって毎日苦情が来てるんだ。」

グッドイヤーは荷物をまとめ、一人で家を出た。

ゴムに命を捧げる。
そう決めたんだ。

彼は実験を繰り返した。
その内に、硝酸にゴムを浸すという方法を編み出し、ゴム靴を作ることに成功した。

彼のゴム靴は飛ぶように売れた。
「ようやく積み重なった借金も返済できる。」

そう思った時、彼を悲劇が襲う。

金融危機
1837年の大恐慌だった。

グッドイヤーさん。あなたの工場は差押えます。これまでに融資した金も、全て返してもらいます。」

またしてもグッドイヤーは一文無しになった。

「いよいよ俺もダメなのかもしれない。」
彼は売れ残ったゴム靴を履いて、実験室のストーブの前でウトウトと居眠りを始めた。

朝目を覚ますと、履いているゴム靴が変色していることに気づいた。
「待てよ・・・。この変色している部分はすごい反発力だ。これまでとは比べ物にならないくらい強いゴムになっている。分かったぞ。寝ている間に、硫黄がこぼれてゴムにかかったんだ。」

この発見により、彼は画期的な合成ゴムを作ることに成功。
自動車のタイヤに採用されると、彼のゴムは爆発的なヒットとなった。
「やった。ついにやったんだ。これで僕は胸を張って家族に会いに行くことができる。」

しかしそれから程なくしてグッドイヤーはこの世を去った。
彼が亡くなった時には、何度も潰した会社の借金がまだ残っていた。

息子は言った。
「お父さんは結局、僕らに借金しか残さなかったね。」
妻は言った。
「それは違うわ。ほら、この証明書を見て。これはお父さんが残してくれた特許。これさえあれば、借金なんてすぐに返せる。私たちも暮らしていける。」

「そっか。やっぱりお父さんは、すごい発明家だったんだね。」