海外メディアが報じる日本

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ギネスビール創業講談

彼は生まれた時から大きな教会にいた。
家系は代々その教会の中で仕事をしていた。
食事作り、掃除、壊れた箇所の補修、経理まで。
牧師に仕え、教会に纏わるあらゆることをやるのが彼の仕事だった。

そんな中でも彼が最も得意としていたのが文章を書く仕事。
牧師が彼に言う。
「今日は不動産の書類の書き写し、それから料理や飲み物のレシピの書き写しを頼むよ。」

「分かりました、先生。ぼくはもうこの書類やレシピは何回も書いているので、すっかり覚えてしまいましたよ。」

「そうか。こんなに難しい書類がスラスラ書けるなんて、お前は将来不動産の方面に進んでもいいかもな。」
牧師がそう言うと彼はニッコリ笑って言った。

「本当ですか?不動産の仕事には興味があります。けど僕が本当にやりたいのはレシピの方かな。」

彼の亡くなった父親はビール作りの名人だった。
父親が作った秘伝のレシピは彼に取って宝物だった。
父親の手作りビールは世界一うまい。
でも手作りビールなんて所詮趣味の世界だもんな。
彼はそんな風に考えていた。

そんな中、運命を変える出来事が起きる。

病に倒れた牧師はベッドに横たわり、彼に言った。
「お前はこの教会を守るためこれまで頑張ってくれた。私が死んだら幾ばくかのお金を残すから、それで世の中の為になることをしなさい。」

彼は悩む。

世の中の為になるって何だろうか。

彼は考えながら街中を歩いていた。

そしてある発見をした。

道を挟んでこちら側は掃除が行き届いていて、活気がある。
道の向こう側は朝から酔っ払いがケンカをし、建物は落書きだらけ。

そうか。

こちら側はビールを飲む文化。
対するあちら側はジンを飲む文化だ。
安いジンを煽ったならず者が暴れ回り、街を荒らしている。
ならば僕がやれる世の中の為になること。

彼は不動産会社に行った。
「僕はビール工場を作りたいんです。どうか川沿いの土地を僕に売ってください。」
こうして不動産の知識を駆使して、水が豊富に出る川沿いの土地を安く手に入れた。
そして秘伝のビールのレシピを使って、ビール会社を設立。
彼の作った黒ビールは瞬く間に評判となっていった。

みんなが安酒を浴びるように飲む街はいずれ滅びる。
美味しいビールを今日のご褒美に適量飲む。
そんな街にならなければならない。

世の中の為になる仕事。
僕に取ってはそれは、ビール作り。