海外メディアが報じる日本

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ポールとコリイの絆。




自殺した2人の友人に対し、あるミュージシャンが心ない投稿をした。

「自殺なんて、腰抜けもいいとこだ!」

その発言に、彼は反応した。

「そう言ってしまうのは簡単なことだ。どんなに深刻な問題かを考えず、事実に背を向けて、何事も起こってないかのようなフリをすればいいだけなんだから。でもチェスターやクリスは苦しんだ。鬱病に悩む人たちは、ほとんど場合常に苦しみを抱えている。その波が永遠に引かないように思えることだってある。でも君は一人ぼっちなんかじゃないし、ましてや腰抜けなんかじゃない。必要な助けを求めるんだ。手を貸してくれる施設や団体もある。俺も紹介できる。」


彼自身、鬱病で2度の自殺未遂を行った。

1度目は子供の時。
2度目は大人になってミュージシャンとし世界的に成功した後の話。

鬱病は、立場と関係なくやってくる。


子供の頃は貧しく、家賃が払えずに何度も引越しをした。
年上の友人から、性的な虐待を受けた。
「言いふらせばお前の母親を傷つける」と脅され、大人になるまで誰にも打ち明けることができなかった。
15才でドラッグ中毒に陥り、コカインの過剰摂取で2度倒れた。

どん底の彼を救ったのは、祖母が買ってくれた楽器と、聞かせてくれたエルビス・プレスリー

彼は音楽の道を歩んだ。

最初に結成したバンドStone Sourに所属しながら、別のバンドからの誘いを受け、後者で先にデビューすることになる。

そのバンドの出現に世界は驚いた。
理不尽、不平等、偽善、無知、見て見ぬフリ。

社会への怒りが込められた凄まじいサウンドは、当時ムーブメントを起こしていた他のラウドロックバンド達を葬り去ってしまった。
自意識を無くして心の野性を解き放つ為、メンバーは全員マスクを被ってパフォーマンスをした。

その外見から、彼らは一発屋に過ぎないと考えた人びとも居たが、そうはならなかった。


「俺たちは怒りや憎悪から解放されることはないだろう。だが最後に笑うのはこっちだ。」


2010年、彼をバンドに誘ったポール・グレイがホテルで遺体で発見された。
モルヒネの過剰摂取だった。

彼はポールの顔の絵を、足にタトゥーとして刻むことにした。

作業中、入れ墨師は彼に尋ねた。

「ポールとは、仲が良かったのですか?」

彼は答えた。
「俺がバンドに入る前から仲が良くて、毎日を一緒に過ごしたんだ。とてつもなく才能があり、知る限りでは最高の音楽心を持った男だった。彼の友達でいられたことに、感謝するしかないだろう。」

「それはとても素敵な言葉です。多くの人は…そのことを口に出来ないまま、終わってしまう。」

しばらくすると、妻のステファニーがやってくる。
ステファニーは彼の頭を撫でながら、尋ねた。

「ポールのことで、真っ先に思い浮かぶことを私に教えて。」

「彼の笑い声だ。あの笑い声。彼が恋しいんだ…」
そう言うと彼は泣き出してしまった。


2014年に彼らは6年ぶりのアルバムをリリースした。
ポールの名前を冠したアルバムタイトルは「ザ・グレイ・チャプター」。

コリイ・テイラーはSlipknotとStone Sour、2つのバンドのヴォーカルとして、休むことなく活動を続けている。