ジミヘン講談
彼は陸軍に入ったが、軍隊から追放された。
ロクな男じゃなかったのだ。
でも楽器はうまかった。
色んなバンドから声がかかった。
その頃、R&Bの最大のスターと言われたリトル・リチャードのバックを務めた。
化粧をして口紅を塗った奇妙なスタイルの男。
アイズレー・ブラザーズのサブメンバーでもあった。
やがて彼はブルー・フレイムズというグループを結成。
ニューヨークのグリニッチ・ヴィレッジのカフェ「Wha?」と契約、箱バンとして夜な夜な演奏をした。
イギリスのロックグループの一人がこの店に来たとき、彼はこのバンドがやっていたある曲に引っかかった。
〜
おいお前、ピストル持ってどこへ行くんだ?
俺は嫁を撃ちに行くんだよ。
他の男と浮気しやがって。
そりゃお前、かっこ悪いよ。
おいお前、嫁を撃ったんだって?どこへ行くんだ?
俺はメキシコに逃げるんだ。
誰も見つけられないところに逃げるんだ。
〜
イギリスのバンドのメンバーは本人と話した。
この曲、イギリスじゃ絶対大ウケするよ。
俺と一緒にイギリスに行こうよ。
録音してレコードを出そうよ。
俺がマネージャーになるからさ。
結局1967年2月、イギリスで6位。
彼の快進撃が始まった。
この時のデモテープに彼の声が残っている。
「バンドの音をもっと上げてくれる?俺の声はもっと下げて。」
彼は自分の声に自信が無かった。
でも心の中では、「あのディランが出来るんだから、俺にも出来る」
そう思っていた。