海外メディアが報じる日本

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マクドナルド兄弟講談

「兄さん、まだ誰もやってないレストラン、僕らならきっとできるよ。ほら、これが設計図。」

弟は自分が書いた店の設計図を兄に見せた。

「なるほどな…。カウンターの目の前にキッチンか。これならすぐに料理を提供できるな。ただこれだとさ、作れる料理の数はずいぶん少なくなってしまうよな。」

「兄さん、そこが狙いだよ。美味くて飽きの来ない物だったら、品数はむしろ少ない方がいい。素早く出せば、どんどんお客は来てくれるはずさ。」

弟の読みは見事的中し、兄弟が開いたレストランは連日大盛況。彼らは毎日店に立ち、必死に働いた。

ある日兄は弟に言った。
「どうだろう、もう少し飲み物を早く出せないかな?オーダーが入ってから作るとどうしても時間がかかってしまうだろう。」

弟は言った。
「それなら兄さん、大きな機械を入れて、作り置きすればもっとスピードアップ出来るよ。少しお金も貯まってきたから、思い切って機械を入れてみようよ。」

「そうだな。よし、機械のメーカーの人に来てもらおう。」

こうして兄弟は、機械メーカーの営業マンを店に呼んだ。
「いやあ、素晴らしい店ですね!料理を出すスピードが早くて、いつも若者で賑わっている。こんなにすごい店は見たことがない。うちの機械も、この店できっといい仕事をしますよ。」

営業の男は飲み物の機械をキッチンに設置した。
「これでこの店はますます繁盛すること間違い無しです。しかしこれだけの繁盛店が1店舗だけっていうのはもったいないなあ…。是非一緒に店舗を増やして、儲けようじゃないですか!」

兄は言った。
「ダメだよ。そんなことしたら、味が落ちる。僕たちのこだわりは、そんな簡単に人が真似できるようなものじゃないんだ。」

しかし弟の反応は違った。
「兄さん。兄さんの病気が悪くなってるのを僕は知ってるんだよ。これからきっと医療費もかさむよ。だからこの人の言うようにしてみようよ。」

結局弟の説得により、兄は渋々男の案に賛成をした。
しかしその男はそこから態度を豹変させた。
自分こそが店の創業者だと名乗り、フランチャイズオーナーの勧誘を始めた。
そしてあっという間に店舗を増やし、利益を上げていった。
兄弟はそれを指をくわえて見ているしかなかった。

男は言った。
「私に全ての権利を預けて下さいよ。そうすれば幾ばくかのお金が入って、あなた達の老後は安泰です。もう毎日店に立つ必要もないんですよ。」

兄弟は長いあいだ、自分達の味を守る為に働きづめだった。確かに体はクタクタになっていた。

弟は言った。
「兄さん、僕たちの時代は終わったのかもしれない。でも僕たちの名前が残るなら。それは素晴らしいことじゃないか。ねえ兄さん。」

弟はベッドに寝ている兄を起こし、契約書にサインをした。
こうして二人は、自分たちが作った店を手放したのだった。